なぜ「正しいマーケティング」ほど、人の心を動かせなくなったのか

なぜ「正しいマーケティング」ほど、人の心を動かせなくなったのか

「やるべきことは、全部やっているはずなんです。」

SEO対策もしている。
広告も回している。
SNSも更新している。
数字も、理屈も、どこを見ても間違っていない。

それなのに、なぜか反応が薄い。
問い合わせが増えない。
「悪くはないけれど、決め手に欠ける」と言われる。

こうした違和感を抱えている企業や担当者は、決して少なくありません。

それは努力不足でも、能力不足でもありません。
むしろ逆で、「正しいことを、正しくやりすぎている」からこそ起きている現象かもしれません。


現代のマーケティングには、多くの「正解」があります。

KPI、CVR、CTR、CPA、PDCA。
どれも重要で、どれも否定できません。

ただ、それらを忠実に追いかけるほど、
Webサイトも、広告文も、提案資料も、
驚くほど似た表現になっていきます。

正解をなぞることは、失敗を避けるには有効です。
しかし同時に、「選ばれる理由」も薄めてしまう

結果として、
「ちゃんとしているけど、印象に残らない」
そんな状態が生まれてしまいます。


人は、論理で理解し、感情で決断します。

数字は「安心材料」になります。
比較検討の段階では、非常に重要です。

しかし、最後の一歩──
「ここに相談しよう」
「ここに任せよう」
という決断は、数字だけでは起きません。

その瞬間に必要なのは、

  • 共感
  • 納得感
  • 自分ごととしての実感

つまり、感情のスイッチです。

多くのマーケティング施策が届かなくなっているのは、
理屈が足りないからではなく、
感情に触れていないからなのです。


映画、漫画、小説、ドキュメンタリー。
人が強く心を動かされる体験には、必ず「物語」があります。

そこには、

  • 背景
  • 葛藤
  • 選択
  • 失敗
  • そして意味

があります。

人は、物語の中に自分を重ね、
「これは自分の話だ」と感じたときに動きます。

商品やサービスそのものではなく、
それが生まれた文脈や思想に触れたとき、
初めて「納得」が生まれるのです。


ここで誤解されがちなのが、
「感性」や「物語」は属人的で、再現できないという考えです。

しかし実際には、

  • どこで共感が生まれるのか
  • どの順番で伝えると腹落ちするのか
  • どんな言葉が感情に残るのか

これらは、観察・言語化・構造化によって整理できます。

感性とは、
「曖昧なもの」ではなく、
まだ整理されていない情報に過ぎません。


私たちが重視しているのは、
「正しいかどうか」ではなく、
「どう伝わるか」です。

数字も使います。
SEOもやります。
AIも活用します。

ただしそれらは、
人の心に届くための手段であって、目的ではありません。

ロジックと感性。
データと物語。
効率と余白。

その両方を同時に扱うことでしか、
今の時代に「選ばれる理由」は生まれないと考えています。


正しいマーケティングを否定する必要はありません。
ただ、それだけでは足りなくなった。

「伝える」から
「伝わる」へ。

その一歩を設計することが、
これからのマーケティングの本質だと、私たちは考えています。